近年、住宅選びのポイントとして断熱性の高さが注目を集めています。しかし、中古住宅の場合は築年数が古く、断熱リフォームが十分でない可能性が考えられます。そこで本記事では、中古住宅の断熱リフォームが推奨される理由や、断熱リフォームの方法や費用をまとめて紹介していきます。
中古住宅の断熱リフォームが推奨される理由
中古住宅の断熱リフォームが必要な理由は大きく分けて2つあります。それぞれの理由を見てみましょう。
古い住宅の断熱性能は低い傾向にある
まず、新築時の基準に比べて古い住宅は、当時の断熱性能が低い傾向があります。建築基準法の改正や省エネ法の施行に伴い、住宅の断熱基準は徐々に厳しくなってきました。
たとえば、昭和55年の「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」の施行を皮切りに、平成11年の「品確法」平成27年の「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の改正があり、前述の法律の変化に合わせて断熱基準も進化してきました。
経年劣化による断熱材の劣化
古い住宅では、経年劣化によって断熱材が劣化し、雨漏りなどの影響で水分を含む場合もあります。このような状況では、断熱性能が低下し、居住環境やエネルギー効率に影響を及ぼす可能性があります。
また、近年ではZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)などの省エネ性能が高い住宅が増加しており、古い住宅の性能がこれに比べて劣っているのが明らかです。したがって、中古住宅を購入した場合、新築時の基準に合わせた断熱リフォームが必要になる可能性があります。
新築時の基準に合わせた断熱リフォームをすると、住宅の断熱性能を向上させ、快適な居住環境を確保するとともに、エネルギー消費を抑えることが可能となります。中古住宅の購入を検討する際には、断熱性能の点検やリフォームの必要性を検討するのが重要です。
断熱リフォームの方法と費用を紹介
中古住宅の断熱リフォームには、壁や天井、床の断熱性を高める方法と、窓サッシや玄関ドアからの熱損失を抑える方法の2つが主にあります。
壁や天井・床の断熱性を高める方法
まず、壁や天井、床の断熱性を高める方法では、断熱材を追加するか、性能の高いものに取り替える方法が考えられます。外部に面した壁の中や、床下、天井裏に断熱材を充填すると家全体を包み込むように断熱性を高められます。
しかし、単に断熱材を追加するだけでは、内部結露が発生し柱や土台の腐朽やシロアリ被害を引き起こす可能性があるため、防湿層も併せて施工する必要があります。
壁内・床下・天井裏への断熱材充填には、グラスウールやウレタンフォーム、吹き付け発泡ウレタンなどの方法があり、それぞれの費用は1㎡あたり1,000円から6,000円となります。
開口部からの熱損失を抑える方法
次に、開口部からの熱損失を抑える方法では、窓サッシや玄関ドアの断熱性を高める方法が考えられます。古いアルミサッシや単板ガラスは熱伝導率が高く、外気温の影響を大きく受けるため、樹脂製サッシや複層ガラスに取り替えることで断熱性を向上させられます。
窓の断熱リフォームには、窓サッシを交換する方法や内窓(インナーサッシ)を取り付ける方法があります。また、玄関ドアも断熱性の高いものに取り替えると、熱損失を防ぎます。窓や玄関ドアのリフォームにかかる費用は、1箇所あたり20万円から60万円程度です。
条件を満たすことで減税措置の対象になる
断熱リフォームには高額な費用がかかる場合があり、結果として妥協するのを考える人もいますが、減税制度を活用すると負担を軽減できます。特定の条件を満たせば、「増改築等工事証明書」を添付して確定申告を行うと、さまざまな減税が適用される制度があります。以下に、代表的な2つの減税パターンを紹介します。
まず「全ての部屋の窓を断熱リフォーム」する場合、一定の条件を満たすことで減税の対象工事となります。この条件には、居住する床面積が50㎥以上の中古物件を購入し、リフォーム用のローンを利用せずに一括で代金を支払うことが含まれます。
この場合、「投資型減税」が適用され、翌年の所得税から最大25万円が減額されます。投資型減税を活用すれば、大きなコスト削減が実現できます。
そして、もうひとつのパターンは「窓、床、天井、壁の断熱リフォーム」を個別に行う場合です。この場合、返済期間が5年以上のリフォーム用ローンを組むと「ローン型減税」や「住宅ローン減税」の適用対象になります。
「ローン型減税」では、翌年以降の5年間で毎年最大12万5000円が所得税から減額され「住宅ローン減税」では最長10年間にわたって、年末ローン残高の1%が所得税から減額されます。
前述の減税制度を利用すると、断熱リフォームの負担を軽減できます。費用の面で妥協せずに、快適で省エネな住環境を手に入れるために、制度を活用してみるのをおすすめします。
まとめ
中古住宅の断熱リフォームは、古い住宅の断熱性能向上が必要不可欠です。築年数の経過や経年劣化によって断熱性が低下し、快適な居住環境やエネルギー効率が損なわれる可能性があります。リフォーム方法は壁や天井、床の断熱性を高めることや窓サッシや玄関ドアの断熱性を向上させることが挙げられます。また、条件を満たすと減税制度の適用が可能であり、費用の負担を軽減できます。断熱リフォームを検討する際は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。